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ドクターの目 [第2回]
アトピー“青い鳥”症候群

ドクターの目 [第2回] アトピー“青い鳥”症候群

ドクターの目 [第2回] アトピー“青い鳥”症候群

 「先生のところに半年通っても治らへんかったけど、○○の塗り薬を塗ったらすぐ治ったで」。先日、ある患者さんから言われてがっかりしました。

 現在、アトピー症状を「すぐ消せる」薬は、ステロイド以外にありません。アトピーの人は、何かいい治療・薬はないかと "青い鳥" を探して、平均9.4カ所の病・医院を渡り歩いている、というデータがあります。

 どこをどう探しても、すぐに症状を軽快させることができるのはステロイドだけです。ステロイドは、症状を引かせたのであって「アトピーを治した」のではないのです。

 遺伝的に皮膚が乾燥していて、悪化の要因も多々ある重症アトピーは、なかなか根気のいる病気です。東京大学の安田名誉教授が言われたように、「ゆっくり慌てず」治していく必要があります。最終ゴールは、近視の人が眼鏡をかければ問題ないように、「適切な」保湿剤を塗っておけば、日常生活に差し支えないというレベルだと考えています。

 アトピーが悪化している時は、家が燃え盛っている状態です。ステロイドは火を消す "水" です。勢いよく水をかければ(強いステハロイドを使えば)すぐに消えるのは、当たり前のことです。残念なことに、アトピーの肌は燃えやすい "木造住宅" なのです。特に乾燥する冬場は "火事" が起こりやすいのです。日ごろから木の上にモルタル(保湿剤)を塗って燃えにくくするのは、非常に重要です。火事が出たから消し、また火事だといっては消すことを繰り返していますと、家が傷んできます(皮膚が薄くなったり、肌が赤くなったり、目の周りや首が黒ずんだりします。

 ステロイドは薬店でも手に入ります。ステロイドだとは知らず、塗ると肌がツルツルするからと、化粧下地に毎日塗り、赤ら顔になってきたので塗るのをやめたら、顔が膨れてジュクジュクになったご婦人もいました。

 ステロイド自体は素晴らしい薬であり、うるしかぶれや化粧負けなどの "急性" 湿疹(しっしん)には効果絶大です。「これでも塗っていたら」と安易に処方する薬ではありませんが、現在、ステロイドは怖い薬だという情報が流されすぎています。時々、「ステロイドを使わないでくれ」と言う人がいますが、ステロイド自体を全否定すれば、医療は明治や大正時代に戻ってしまいます。

 医師が、この病気はステロイドを使うべきか、使わない方がよいのか、この状態・時期・年齢ではどうかを正しく判断できれば良いわけです。特に慢性的になりやすいアトピー性皮膚炎の場合は使用法が難しく、皮膚科医の存在の意義があると思っています。

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